【怖い話】知らない男の子
高校2年生の夏休みに祖母の家に泊まりに行った時の体験です。
私は山や川に囲まれた自然豊かな田舎が大好きで、
祖母の家に行くことを楽しみにしていました。
朝に出発し数時間後到着。
早速、兄と川に入ったり釣りをしてみたり
畑にトマトを採りに行ったりして夏を満喫していました。
夕方近く、母が子どもの頃に通っていた小学校に遊びに行きました。
小学校は廃校となっていますが
その隣にコミュニティーセンターとして小さな建物が建てられています。
その中の部屋のひとつに、卓球台があるのが見えました。
すぐに入って遊び始めると、
窓の外から小学生くらいの男の子が私たちを見ていることに気づきました。
この子も夏休みで遊びに来ているのかなと思い、
窓を開けて「一緒にやる?」と声をかけると「うん」と頷き、
3人で卓球大会を楽しんでいました。
しばらくすると疲れてきたのと飽きてきたのもあって、
他に何かないかと探し始めました。用具入れらしき扉を発見し、
中を見てみるとバトミントンセットがあったので
「次はこれをしよう」と振り返った時、忽然と男の子が消えていました。
トイレに行ったのかと思い、
しばらく待ってみましたが一向に戻ってきません。
もしかして家に帰ったのではないかと外に出てあたりを見回し
川の向こう岸にある一軒の家に目をやった時、
あの男の子が家に入っていくのが見えました。
「何も言わず帰らなくてもいいのにねー」
などと言って、夜になりかけていたので私たちも片付けて帰ることにしました。
空は暗くなりかけており、外灯がないので早歩きで進んでいると、
向こう岸にある家から男の子が夕食の支度の手伝いをしているようで、
七輪のようなものを玄関先に出しているのが見えました。
「あそこの家は焼き魚かな」と思いつつ祖母の家に帰宅し、
汗を流した後私たちも夕食です。
食卓を囲みながら先ほどのことを話していると、
祖母が不思議そうな顔をしてじっと聞いているので「どうしたの」と言うと、
「その家って○○さんちよ。あそこはもう誰も住んどらんよ」
と言うのです。兄も私も無言になりました。
あの男の子は誰だったのか、
一緒に遊んだのは何だったのか、
なぜあの家に行ったのか、
自分の目で見たことが夢だったのかと頭がいっぱいになりを、
その晩はよく眠れませんでした。
朝になり、ざわつく心を鎮めつつ男の子が入って行った家に行ってみました。
もぬけの殻でした。
窓も割れて枠だけ、家の中もツルなどの植物が生えており
とても人が住める状態ではなかったのです。
一緒に遊んだあの男の子は一体誰だったのでしょう。
あれから20年余りが経ちましたが
現在もコミュニティーセンターは健在です。
ただ、入り口にも窓にも頑丈な鍵がつけられており、
あれ以来入ったことはありません。
中をのぞくと当時貼ってあったポスターがそのままで、
まるであの日のまま時が止まっているかのように感じるのです。
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